プログラム(4)

神経眼科手術学

清水公也

清水 公也

北里大学

ものを見ることは、目に入った光を網膜において電気信号に変換し、視神経を介して脳に伝え、脳においてその入力信号の選択と抑制を行い、選択された信号を脳で描く。すなわち“見るということは脳で描く”ことである。

目は左右2つあり、これらは交差線維のみではなく、非交差線維に半分ずつ分かれる。また左右の眼球の位置は、約60mm離れており、左右の像は若干ずれ(視差)ているものの一つの像として脳において構築される(融像)。立体視が得られる理由の一つになっている。しかし、左右からの像は、脳において必ずしも平等に選択されるわけではない。平等に選択される場合(左右の視力が同じ場合)像は単眼に比べ脳で強く構築される(累加効果)。また左右からの視力が異なる場合、脳は明瞭な像を選択する。この場合立体視機能の低下が生じる一方、左右の任意な像を選択できる(モノビジョン)。

一方、左右どちらかの像が強く選択される場合(眼優位性が強い)には、優位な像が常に選択され、劣位の像が明瞭な場合でも、優位眼の像を抑制できず(blur suppression)、劣位眼の像に優位眼の像が重なるようになり、不明瞭な像となる。この場合モノビジョンは困難となる。さらに眼優位性が強くなると、立体視機能障害や、斜視を生じる場合もある。

このように、脳はものを見る際に左右の像をコントロールしており、これらのことを理解せずして快適な眼鏡作成や、白内障手術はありえない。それ以外にも単眼視と両眼視においては瞳孔反応も異なり、明るさ以外に収差にも大きく影響してくる。この講演においては、これらのことを考慮した、眼内レンズ度数の決定法や、瞳孔処理について実際の手術ビデオを供覧して、神経眼科手術学を紹介したい。

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